ロボコン部顧問になって10年目。
10年間で部員として活動した学生は148名。
みんなに伝えたい。ここまで来たよ。と。
高専ロボコン2020において沼津高専ロボコン部は
東海北陸地区大会にて
・18年ぶりに優勝(今年は最優秀賞)
・14年ぶりの全国大会出場
全国大会にて
・第1回大会の優勝に次ぐ準優勝(超はぴ☆ロボ賞)
・沼津高専初のロボコン大賞を受賞
と記憶にも記録にも残る結果となった。
今日、全国大会の放送があることを踏まえて、これまで沼津高専ロボコン部を応援してくれた全ての人に向けて、そして何より、沼津高専ロボコン部で活動してくれた全てのOB/OGに向けて、顧問としてロボコン大賞までの軌跡を記すことにする。
*内容は個人の見解であって、所属組織を代表するものではありません。

2020年度全国大会終了後にて
沼津高専と高専ロボコンの歴史
—
第1回大会優勝の沼津高専、最近は全国大会になかなか出場できていません。
今年は全国大会に行けるのでしょうか?
—
きっと多くの部員は良く聞いた言葉だ。
最後に全国大会に出場したのは2006年第19回大会「ふるさと自慢特急便」。
東海北陸地区大会に参加する度に、沼津高専に対するアナウンスは毎年同じになっていた。
スタートゾーンから一歩も動けない。
ロボットが本番までに完成しない。
そんな印象を持っていた方も多いように思う。
顧問として当時の彼らを守るために言うと、
市販品に極力頼らない自作回路にこだわりを強く持っていただけだし、
緊張から焦ってしまい直前でプログラム開始ボタンを押し忘れただけだし、
全てのロボットは完成していなくても、競技はじめの動作は完璧に動いていたし、
本気でロボコンに取り組んだからこそ、ケンカして工数の予定が大幅に狂っただけだし、
と、今でも彼らの真剣な、楽しそうな、そして、悔しそうな顔が浮かぶ。
実際彼らは色々なことに挑戦してくれた。
ロボット開発のスケジュールをうまく管理できなかったため、機械班、回路班、制御班という現在の役割分けとは別に、マネジメント班、装飾班を設けて、ロボット開発には関わらない部員を設けたりもした。
ロボット開発の人数が足りないので部員を増やしたいけど、ロボコン部って忙しそう、オタクが多そう、というイメージを変えるため、新歓イベントを開催したり、高専ロボコン以外の活動(小学生向けイベント等)を始めて、ロボコン部=楽しい、というイメージを持ってもらい、結果部員を大幅に増やしたりもした。
そういう地道な活動の中で、
2013年第26回 Shall We Jump?では地区大会ベスト4、デザイン賞(オク跳ばす!!!)
2016年第29回 ロボット・ ニューフロンティアでは地区大会準優勝、特別賞(くれてぃ〜ぶ)
が記録として残る結果である。

2013年地区大会ベスト4:オク跳ばす!!!

2016年 地区大会準優勝:くれてぃ〜ぶ
他の高専でも同様のことと思うが、
顧問として、彼らを一番誇りに思う点が技術継承だ。
先輩が後輩に技術講習をして技術を継承する。
当たり前のように聞こえるが、実際彼らが継承している技術はすごい。
自分達で回路考えて設計して外注して実装してテストして。
むしろ、凄すぎて顧問でもよくわからない。
だから、顧問はロボット開発に手を出していません。
部長との頻繁な打ち合わせという名の雑談(ほぼ毎日)
提出書類を締め切りまでに間に合わせるためのチームリーダーとの必死のやりとり
欲しいと言われたものの注文作業
活動資金獲得のための学内/学外渉外
試走場確保のための学内へのお願い
何より、見守ること。
・・・くらいだろうか。
今回のロボコン大賞は
もちろん、チャリモチームの3年生8人が努力した結果であるが、
その背景には彼らにロボコン部での過ごし方、技術、全国への思いを伝え続けてくれた
歴代のOB/OGの存在あってこそのものと思っている。
特に、
・ロボコン部を楽しむことの大切さを教えてくれた
・真剣にロボットをつくることの大切さを教えてくれた
・自分達で納得のいくまでこだわることの大切さを教えてくれた
・チームで全国に挑む決意を見せてくれた
・誰よりも選手をサポートする姿勢を貫いてくれた
歴代の部長を始め、OB/OGに感謝の気持ちでいっぱいである。
沼津高専の今年の状況
新型コロナウィルス感染症予防のため、3月より登校禁止となる。
今年度の沼津高専の主な状況は次の通り。
4/6 引き続き 部活動停止が決定(再開時期は未定)
5/19 遠隔による授業の開始
6/29 分割登校による対面授業の開始(A日程の学生が登校)
8/24 遠隔組と対面組の入れ替え(B日程の学生が登校)
10/2 後期も分割登校の継続が決定
クラス毎に全員登校日の設定など一部緩和
10/12-11/13 B日程の学生が登校
11/16-12/25 A日程の学生が登校
10/9 学内での部活動再開
このような状況の中、6/26にルール発表があり、
自宅や寮の自室で集まらずに開発をすること、
ミーティングは全てオンラインで行うことなど、
その日のうちに学内関係者に相談し、沼津高専ロボコン部として大会出場を決めた。
ちなみに、当初沼津高専ロボコン部からは
・Aチーム(2年生):イルミネーター
・Bチーム(3年生):チャリモ
・Cチーム(4,5年生):NUMAVOLTAチャレンジ!
と3チームの出場を予定していた。
NUMAVOLTAチャレンジ!は
SWIM、BIKE、RUNを行うロボットによるトライアスロンで
アイデアシートの段階で注目していただいていたものの、
学内での部活再開が見込めない中、
後輩のサポートに回るという判断の元、出場辞退となった。
東海北陸地区大会、18年ぶりの最優秀賞。14年ぶりの全国大会出場へ。
10月25日(日)、第33回アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト2020 東海北陸地区大会がロボコン史上初めてオンラインで開催された。
今年度の競技課題は「はぴ☆ロボ」、だれかをハッピーにするロボットを作ってキラリ輝くパフォーマンスを自慢しちゃおうコンテスト。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、これまでの高専ロボコンとはまったく違う形式の大会となり、沼津高専チームは本校第2体育館よりロボットのパフォーマンスを披露した。
沼津高専からはAチーム「イルミネーター」、Bチーム「チャリモ」の2チームが出場。
2年生が主体となったAチーム「イルミネーター」は予選ラウンド33点/50点で、20チーム中8位。決勝トーナメントには進めなかったものの、特別賞(セメダイン株式会社)を受賞。集団行動という難しいパフォーマンスに挑み、12機のロボットをぎりぎりまで調整し、パフォーマンス仕切ったことは大きな成果となった。
Bチーム「チャリモ」は予選ラウンド47点/50点で、予選ラウンドを1位で通過。
決勝トーナメントでも予定通りのパフォーマンスを発揮した結果、18年ぶりの最優秀賞(今大会は優勝ではなく最優秀賞)、14年ぶりの全国大会出場に繋がった。




予選ラウンドのパフォーマンスが終わった瞬間のチームリーダーのガッツポーズと笑顔。47点が出た瞬間の体育館の雰囲気は今でも忘れられない。そこから一気に、決勝ラウンドに向けてフィールド改良が始まった。パフォーマンス内容の相談やカメラアングルを詰めている横で、2年生チームや4,5年生の部員全員でフィールド作り替えをしたことが、最優秀賞につながる決勝パフォーマンスへの力になったと考えている。

顧問が把握している限り、チャリモの原案が出てきたのは7月上旬。そして、初めてチャリモが自立したのは10月上旬だったと記憶している。どうしても自立にこだわる彼らに対して、補助輪を提案し、それを外すこともパフォーマンスに入れたらどうかと保険をかけるような提案をしたことを覚えている。実はNHKディレクターより取材の打診を頂いた際、遠隔開発真っ最中だったため、取材に来てもらって本当に大丈夫か、不安がなかったかといえば嘘になる。
しかし、本当によく頑張った。心からその努力を讃えたい。

全国大会出場が決まった直後より、チャリモ改造についてオンライン会議が連日開催された。
ルール発表から全国大会当日まで、チャリモチームが行ったオンライン会議のログを確認したところ、日曜日と木曜日を除く、毎日20時から1時間という彼らが決めた努力の証は合計141時間16分であった。
顧問としても担当している授業(ロボット工学・制御工学等)にて受講学生にアンケートを実施し、チームメンバーに参考資料として渡したりしていた。
全国大会、沼津高専初のロボコン大賞・超はぴ☆ロボ賞受賞へ
11月29日(日)、第33回アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト2020 全国大会がロボコン史上初めてオンラインで開催され、沼津高専チーム「チャリモ」が出場28チームの中で最も栄誉のあるロボコン大賞を受賞した。
東海北陸地区大会にて最優秀賞(例年の優勝)を受賞した沼津高専「チャリモ」チームは全国大会までの約1ヶ月間、更に良いパフォーマンスをするためにロボットを改良し、2台のロボットによる遠隔サイクリング、2輪自立走行でのカーブ走行を実現。
全国大会では予選ラウンドにて39.7点/50点となり、28チーム中2位で決勝ラウンドに進出。決勝ラウンドでは2台のロボットによるパフォーマンスを披露し、43.7点/50点を獲得し、総合2位となり、超はぴ☆ロボ賞(例年の準優勝)を受賞。
また、大きな夢とロマンを持ってロボットを製作し、唯一無二のアイデアを実現、見る者に深い感動を与えたチームに贈られる賞である、最も栄誉のあるロボコン大賞を初めて受賞。






こういうと、歴代のOB/OGは驚いてしまうかもしれないが、これでもか、と練習した。練習して原稿を変え、練習して配置を変え、練習してカメラアングルを変え。東海北陸地区大会、全国大会ともに予選ラウンドのためにほとんどの時間を費やした。その結果が皆さんにご覧いただいた沼津高専の成果である。
そして、決勝ラウンドについては学生とも相談し、あえてほとんど練習しなかった。ここには顧問として歴代の部員達と切磋琢磨してきたからこその思いがある。
それは「今、目の前のことに、後悔ないように、全力で取り組むこと」
自分たちがこれまで頑張ってきた成果を発揮できるように、そのために目の前の予選ラウンドに集中する形をとった。決勝ラウンドのためのパフォーマンスについて直前で確認したりしている点が放送されていたのはそのためで、様々なトラブルは起こっても仕方ないと顧問の責任で決めていた。
大会終了後。表敬訪問やイベント展示、取材などありがたい出来事が続いた。沼津高専ロボコン部に、学生達に注目していただくことが何より嬉しい。部員達は切り替えが早いもので、さっそく、1年生部員への講習が再開され、次年度に向けての活動が始まっている。


なかなか見ることのできない、ロボコン大賞旗を持たせてもらい、嬉しそうにしている顧問の写真を最後にのせ、この記事のまとめとする。